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2024年4月号 (第217号)
「こう」だらけにもほどがある……そんな今月号のタイトルですが漢字で表しますと「こう」なります↓↓
高硬度鋼用工具の構造
お客様からのタップ選定に関するお問い合わせをもとに、ちょっと考えてみましょう。
「硬いワークが加工できる高性能タップをひとつ持っておけば一般鋼のねじ加工にも当然使えるよね……??」
さてどうでしょう?
一般鋼用と、2種類の対象硬さが異なる高硬度鋼用を比較しました。このうち最も硬いワークに対応できるタップは最右側となります。ではこの高硬度鋼用タップを用いて汎用ワークの代表格、SS400=生(なま)材を加工してみたら……??
弊社内での実加工テストではなんと1穴目の加工途中でボキッと折れてしまいました。そうです、たった一つのねじ穴すら満足に加工できなかったのです。
先ほどのお客様のご期待を無残にも裏切ってしまったこの結果……実はちゃんとした理由があります。
切れ味の不足
高硬度鋼用タップは、硬いワークの加工でも欠けにくくするために、すくい角がマイナス設定(ネガ)となっています。そのため、一般鋼を加工するには切れ味が不足してしまうのです。チップポケット確保が不十分
硬いワーク加工時の切りくずは、脆く、つながりにくい性質ですが、一般鋼の切りくずはつながりやすく、カール状に巻きながら伸びるため切りくず排出が難しくなります。 高硬度鋼用のタップは上図でご覧いただいた通り、一般鋼用に比べチップポケットが小さいため、切りくず詰まりが発生してしまいます。このように、高硬度鋼用のタップ仕様は、対象ワーク硬さが絞られた設計ですので、けっして“万能な上位タイプ”ではありません。必ず、選定段階で適応対象かご確認ください。ご使用時の切削速度はごく低速(2m/min前後)にしてください。分断された硬い切りくずがねじ穴底に残ることを考慮して、下穴径は可能な限り大きく、そして下穴深さにも十分なゆとりを確保しておくとよいでしょう。
ちなみに「高硬度鋼用の止り穴向けにスパイラルタップはないの?」というお問い合わせもよくいただきますが、当社では高硬度鋼にはハンドタップのみの設定としており、止り穴加工にもハンドタップをお奨めしています。これはハンドタップの方が心厚をより大きくでき、ねじれが無いストレート溝による切れ刃の丈夫さ(剛性)も確保できるからです。
なお、当社ではタップとは異なる、新たなねじ加工方法として関心が高まっている「スレッドミル」(=ヘリカル切削により徐々にねじ径を切り拡げる、ミリング加工でのねじ立て工具)シリーズに近年、高硬度鋼用のラインナップを追加展開しています。
下穴加工用の底刃付きのため、1本で下穴加工+ねじ立てまで集約でき、特に突発的なトラブルを極力避けたい加工シーンでとても頼りになります。ぜひご活用ください。
謹啓、麗日の候、皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。先だって、「少ない部材で部品の強度を実現する為に、材料硬度が上がり、加工する工具の耐久性が著しく低下した」という話を耳にしました。
缶コーヒーのCMじゃありませんが、世界は誰かの仕事でできているだけのみならず、様々なトレードオフでできているものなのだなぁ……と思った次第で(笑)
とまれ、部材を少なくして環境負荷が図れたとしても、工具の耐久性劣化や生産性低下などの環境負荷が増加しては意味がありません。ということで、今月は高硬度材の加工についてのイチオシをお届けしたいと存じます。
それでは、お問合せの多いタップから。以下、イチオシを一覧表にしてみました。被削材の硬度と、ねじの種類に応じてお選び頂けたらと存じます。
硬度 | イチオシ | サイズラインナップ |
---|---|---|
42~52HRC | V-XPM-HT | M3~M12 |
V-XPM-TPT | PT1/8~PT1 | |
42~55HR | WH55-OT | M3~M12 |
50~62HRC | VX-OT | M1~M20 |
VX-TPT | PT1/8~PT1/2 |
V-XPM-HTは粉末ハイスにコーティングを施したハンドタップ形状のもので、食い付き長さが2.5Pと5Pの用意がございます。下穴の制約に応じて使い分けくださいませ。V-XPM-TPTは管用テーパねじ用で、こちらは食い付き3Pのみでございます。
VX-OTは、超硬にコーティングを施したハンドタップで、食い付きは3Pのみでございます。その管用がVX-TPT。より高硬度な被削材の大径のねじ加工はとても難しく、サイズラインナップはPT1/2までとなっております。
WH55-OTは上記の中で1番新しいシリーズで、V-XPM-HTとVX-OTの中間的な領域に特化した超硬タップでございます。例えば、45HRC位の被削材で数穴程度加工できれば良いような場合はV-XPM-HTを、同じ硬度で加工数が多い場合はWH55-OTといったように、お使い分け頂けたらと存じます。なお、食い付き長さは2.5Pと5Pを用意してございます。
続いて、高硬度材の穴加工のイチオシでございます。タップ同様、一覧表にまとめてみました。被削材硬度や機械設備に応じてお選び頂けたらと存じます。合わせて、硬度毎に適した切削条件をご用意しておりますので、そちらを参照くださいませ。
硬度 | イチオシ | サイズラインナップ |
---|---|---|
40~55HR | WH55-5D | φ2~φ12 0.5mmトビ、主要タップ下穴 |
WHO55-5D (油穴付) | φ3.3~φ6 0.1mmトビ、主要タップ下穴 φ6~φ12 0.5mmトビ、主要タップ下穴 | |
55~70HRC | WH70-DRL | φ2~φ12 0.1mmトビ |
以上、ご紹介しましたタップとドリルのイチオシの形状寸法や推奨条件等の詳細はこちらでご確認くださいませ。
ところで、タップより高い自由度で、安定したねじ加工ができるスレッドミルでございますが、高硬度材向けのイチオシはこちらでございます。高硬度鋼用底刃付きスレッドミルAT-2。ヘリカル加工で下穴を加工しながらねじ加工を同時行う、複合工具でございます。百聞は一見に如かず、まずはこちらの動画をご覧くださいませ。
ラインナップは、メートルねじがM3~M20までの並目、ユニファイねじがNo.8~1/2UNCの並目で、有効ねじ立て長さが径の2倍と2.5倍の2ラインナップ、管用テーパ用が、1/16Rc(PT)~1Rc(PT)の英式管用ねじ用と1/16NPT~1NPTの米式管用ねじ用をご用意してございます。
最後に、エンドミルのイチオシでございます。賢明な皆さまですから、小爺が何をイチオシに紹介するか?もうお分かりですよね?ええ、皆さまのご想像の通り、Aブランドの高硬度鋼用超硬エンドミルでございます。
製品記号 | スペック | サイズラインナップ | サイズ数 |
---|---|---|---|
AE-MSS-H | スクエア多刃スタブ | φ3,φ4,φ5,φ6,φ8,φ10,φ12 | 7 |
AE-MS-H | スクエア多刃ショート | φ1~φ20主要サイズ+コーナRサイズ | 41 |
AE-ML-H | スクエア多刃ロング | φ3,φ4,φ5,φ6,φ8,φ10,φ12,φ16,φ20 | 9 |
AE-BD-H | ボール高精度仕上げ用2刃 | R0.5~R6 | 17 |
AE-BM-H | ボール高能率型4刃 | R1,R1.5,R2,R2.5,R3,R4,R5,R6 | 8 |
AE-LNBD-H | ボール高精度仕上げ用2刃ロングネックタイプ | R0.05~R3 | 261 |
AE-CPR4-H | 高硬度用ロングネックラジアス4刃タイプ | φ0.2~φ4 | 176 |
AE-CRE-H | ラジアス高能率型 | φ1~φ13 | 13 |
AE-HFE-H | ラジアス高送り型 | φ1~φ12 | 9 |
全9シリーズ541アイテムは、いずれも高硬度鋼用に開発された、超耐熱性・高じん性のコーティング『DUROREY』をまとい、高硬度材の加工においてチッピングを抑制し、工具の長寿命化を実現しております。加工用途に応じて、使い分け頂ければと存じます。工具の仕様、形状寸法、加工条件等の詳細は、こちらを参照くださいませ。
本稿も、皆さまのSDGsな課題解決として、また、お仕事の付加価値や生産性の向上に貢献できれば幸いでございます。
謹言
今月の「OSGお土産100選」
日本のみならず世界各地で働くOSG社員がおすすめのお土産をご紹介します。
今回、ご紹介するお土産はグループ会社である株式会社青山製作所の押野より推薦の「おやつやさん 超なめらかプリン」です。
推薦コメント:
愛知県西尾市に店舗を構える「おやつやさん」はその名の通り、プリンやケーキなどの美味しいスイーツをたくさん取り揃えたお店です。
どのスイーツも美味しいのですが、私のイチオシはとろとろ絶品プリン!低温調理でじっくりと焼き上げられた超なめらかで濃厚な味わいは、今までに食べた事のない衝撃のプリンです。もちろんAoyamaのcoffeeとも相性抜群!
西尾抹茶を贅沢に使用した濃厚で生チョコのような食感のテリーヌもおすすめ!こちらは西尾市のふるさと納税返礼品としても好評です。
私は美味しいものを食べると元気になります。さらに、美味しいものがあると誰かに食べて貰いたくなります。「おやつやさん」のプリンをお土産でお渡しすると、みんな「美味しい~!」と喜んでくれるので、その顔を見て私も元気を貰っています。
おやつやさん
愛知県西尾市永吉1-34
営業日:毎週木、金、土
営業時間:10:00-17:00
公式Instagram:https://www.instagram.com/oyatsuya3/
青山製作所は1986 年にオーエスジー株式会社のグループ会社となり、その3年後、本社と生産工場を愛知県豊川市に移転しました。現在、従業員数は約80 名で、工具の再研磨やカスタマイズに加え、バンドソーや丸鋸刃、ビットの製造・販売も行っています。いずれの部門もお客様の加工現場の最適化(Optimize)に向けて、高能率化やコストダウン、さらにはカーボンニュートラルに寄与できるご提案をしています。また、青山製作所では毎年、特別なお客様にお渡しするノベルティとしてオリジナルのドリップコーヒーを制作しています。